2006年08月12日

●生物暦―cicada

今年はセミが鳴き始めるのが遅かった。散発的には鳴いていたようだが、あの〝蝉時雨〟は聞かれなかった。主な原因は長引いた梅雨。セミは土の中から出てきても、天気が悪いと鳴かない。一斉に鳴き始めたのは、梅雨明け宣言と同時。四国地方の梅雨明けは平年より9日も遅れた。

生き物の姿を見たり、鳴き声を聞いたりすることで季節の移り変わりを感じる「生物暦(せいぶつごよみ)」―。セミの鳴き声は、日本の夏を代表する音だ。テレビや映画の映像でも、暑い夏を演出したいときには必ずといっていいほど入っている。

たとえば夕方のニュース。「○日連続真夏日」などと伝えるときには、強い日差しに照らされたビルや街路樹をティルトし、鳴き声を入れている。ただ、日本には約30種のセミがいて、鳴き声も相当数。それぞれ生息地や現れる時期が異なるから、安易なサンプリングでニュース映像を作るとおかしなことになる。沖縄にしかいないセミの鳴き声が、東京のニュースに入っていた、とある昆虫博士が嬉しそうに指摘していた。

万葉集などにも詠まれ、虫の鳴き声に風情を感じる日本人は、音に敏感だといわれる。NHKなどが製作した番組を欧米に出すとき、セミの鳴き声は消すそうだ。彼らにはノイズにしか聞こえず、苦情がでるという。

とはいえこのクソ暑いさなか、セミの鳴き声を聞いても不快にしか感じない。暑さを忘れる頃になれば、ようやく趣だとかなんとか言えるかもしれないが。

朝から「シャシャシャシャ…」と強く鳴いているのがクマゼミ。このうるさい鳴き声の主が、近年増加している。20年くらい前までは、暖かい沿岸部にしかいなかった。木の枝に産み付けられた卵は、気温が低いと死んでしまう。しかし、地球温暖化の影響などで内陸部や市街地の気温も上昇。生息域はどんどん北上し、公園や植え込みなど、現在ではいたるところでこの騒がしい鳴き声が降り注ぐ。

一方、聞く機会が少ないのは、ヒメハルゼミの鳴き声。6月下旬から7月上旬ごろ、古い神社の林やあまり人が入らない照葉樹林に、ほかのセミより一足早く現れる。ある1匹が「ウイーン、ウイーン…」と高い声で鳴き始めると、ほかの仲間も一斉に鳴き出し、ピタッと止む。〝大合唱〟がこのセミの特徴だ。

そのほかには8月下旬、ほかのセミが姿を消すころようやく目立ち始めるセミがいる。ツクツクボウシだ。「ツクツクボーシ、ツクツクボーシ…」。この鳴き声が聞こえ出すと、夏休みはもうすぐが終わり。宿題の山に焦りを覚えた少年時代の記憶が、哀愁を帯びた音色とともによみがえる。


Posted by yu-topian at 2006年08月12日 22:43
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