2006年11月09日
●恥ずかしくない自動販売機
会社の1階に設置されている自動販売機。7、8台並んでいる。そのうちの1台で、紙コップに飲み物を供給するタイプの販売機が故障していると、半年間ずっと思い込んでいた。
コインを入れ、点灯した注文ボタンを押す。紙コップがセットされ、ドリンクが注がれる。これが普通。しかし、くだんの自販機はしばしば、紙コップが据えられると同時に、硬貨が戻ってくる。そのまま、ドリンク注入。「まただ。賢くない自販機だな」。お金が戻るたびにこう思い、ほくそ笑んでいた。
先日、いつものように返却口の小窓から硬貨を取り出していると、同僚の女性に声を掛けられた。「これってよく当たりますよね」
Σ(゚△゚;)
当たりくじ付きの自販機だったのだ。
そうとも知らずに、バグだとか、センサーの故障だとか、挙句の果てにはお金を入れてからボタンを押すまでのタイミングにコツがあるとか、そんな考えをめぐらせていた自分が、とても恥ずかしくなった。
とはいえ、この自販機。当たりの告知が地味すぎる。女性の説明によると、当たったときは注文ボタン全部(約20カ所)が一瞬、点灯するという。つい紙コップの方に気を取られて、まったく気づかなかった。
そんなくじ付きの自販機が、徐々に減っているという話を聞いた。「当りが出ればもう一本」。ユーザーの購買意欲を煽ろうと躍起になっていた製造業界だが、「2本も同時に飲みきれない」との声が寄せれているためだとか(上述の自販機は、当たると無料になるタイプ)。
一方、増加しているのは、ニュースなどが流れる電光掲示板付きや、災害時に無料で飲み物が出るようになる機種。興味深いのが募金型だ。売上金の数パーセントを、設置者や飲料メーカーが負担する。一本当りにすると、数円程度という。このほか、「10円」か「100円」を、つり銭の一部から寄付できる機種もある。
寄付精神が希薄といわれる日本人だが、同じ代金なら寄付できる方を選ぶだろう。対自販機なら気恥ずかしさもない。
当りを故障と勘違いするのは恥ずかしいが…。
2006年08月12日
●生物暦―cicada
今年はセミが鳴き始めるのが遅かった。散発的には鳴いていたようだが、あの〝蝉時雨〟は聞かれなかった。主な原因は長引いた梅雨。セミは土の中から出てきても、天気が悪いと鳴かない。一斉に鳴き始めたのは、梅雨明け宣言と同時。四国地方の梅雨明けは平年より9日も遅れた。
生き物の姿を見たり、鳴き声を聞いたりすることで季節の移り変わりを感じる「生物暦(せいぶつごよみ)」―。セミの鳴き声は、日本の夏を代表する音だ。テレビや映画の映像でも、暑い夏を演出したいときには必ずといっていいほど入っている。
たとえば夕方のニュース。「○日連続真夏日」などと伝えるときには、強い日差しに照らされたビルや街路樹をティルトし、鳴き声を入れている。ただ、日本には約30種のセミがいて、鳴き声も相当数。それぞれ生息地や現れる時期が異なるから、安易なサンプリングでニュース映像を作るとおかしなことになる。沖縄にしかいないセミの鳴き声が、東京のニュースに入っていた、とある昆虫博士が嬉しそうに指摘していた。
万葉集などにも詠まれ、虫の鳴き声に風情を感じる日本人は、音に敏感だといわれる。NHKなどが製作した番組を欧米に出すとき、セミの鳴き声は消すそうだ。彼らにはノイズにしか聞こえず、苦情がでるという。
とはいえこのクソ暑いさなか、セミの鳴き声を聞いても不快にしか感じない。暑さを忘れる頃になれば、ようやく趣だとかなんとか言えるかもしれないが。
朝から「シャシャシャシャ…」と強く鳴いているのがクマゼミ。このうるさい鳴き声の主が、近年増加している。20年くらい前までは、暖かい沿岸部にしかいなかった。木の枝に産み付けられた卵は、気温が低いと死んでしまう。しかし、地球温暖化の影響などで内陸部や市街地の気温も上昇。生息域はどんどん北上し、公園や植え込みなど、現在ではいたるところでこの騒がしい鳴き声が降り注ぐ。
一方、聞く機会が少ないのは、ヒメハルゼミの鳴き声。6月下旬から7月上旬ごろ、古い神社の林やあまり人が入らない照葉樹林に、ほかのセミより一足早く現れる。ある1匹が「ウイーン、ウイーン…」と高い声で鳴き始めると、ほかの仲間も一斉に鳴き出し、ピタッと止む。〝大合唱〟がこのセミの特徴だ。
そのほかには8月下旬、ほかのセミが姿を消すころようやく目立ち始めるセミがいる。ツクツクボウシだ。「ツクツクボーシ、ツクツクボーシ…」。この鳴き声が聞こえ出すと、夏休みはもうすぐが終わり。宿題の山に焦りを覚えた少年時代の記憶が、哀愁を帯びた音色とともによみがえる。
2006年07月02日
●午前7時40分の結婚観
現在、午前7時40分。
久しぶりに朝まで飲み明かした。1時間前に帰宅。すぐベッドに吸い込まれるかと思ったが、なぜか寝付けない。妙なテンションだ。ヒマなので何か書く。
曰く、第1波が来ているらしい。
同年輩の友達が、立て続けに結婚式を挙げている。
昨日も一つ年上の友達の式があった。参列者の既婚率もグンと上昇している。未婚の僕がこんなことを書くと「焦っているのか」と思われそうだが、そういうわけではない。ただ、出席するたびに、結婚観を改めるようになってきた。
たいていの恋愛の結果は、絶望か幻滅。そして、最もましなケースでも、2人で子どもを育てるために現実の苦労に耐えること、である。この最もましなケースが結婚であり、これが最大の幸福であると、一般的に喧伝されている(賛美論、悲観論、色々あるが中庸するとこんなところだろう)。
ひねくれ者の僕は、その従来型の価値観(結婚=幸福)を否定してきた。まだまだ遊び足りないと、失われる自由にばかり目を向けて。
しかし、相次ぐ心知りの結婚が、それを覆した。
ロシアの小説家・思想家、トルストイの『アンナ・カレーニナ』はこんな言葉から始まる。
幸福な家庭はすべて互いに似かよったものであり、不幸な家庭はどこもその不幸のおもむきが異なっているものである。
確かに不幸な家庭は千差万別だが、幸福な家庭の本質──従来型の価値観──、は、変わりないのかもしれない。こう思うようになった。つまり、結婚を是認し肯定するように心境が変化した。
したがって、結婚した友達には心から言える。
「おめでとう」
2006年06月23日
●青空文庫と著作権
芥川竜之介、森鴎外、夏目漱石、太宰治、寺田寅彦…
文豪の作品がタダで読める。
「青空文庫」は、作者の死後50年を経て著作権の消滅した作品などを公開している。入力、校正、しかも無料で配布という大変な作業には頭が下がる。パソコンだけでなく、携帯電話やiPodなどでも利用されている。
読み方は、
①テキストデータをダウンロード。
②そのままテキストファイルを開くと読むことができるが、閲覧ソフトを用いれば、縦書き表示したり、文字の大きさを自由に変えたりできる。
フリーの閲覧ソフトは「smoopy」が、軽くてシンプルでおすすめ。
「扉~とびら~」は細かく設定ができる上、検索も行える。
徳島市出身の海野十三(1949年没)や鳥居隆蔵(53年没)、阿南市出身の北条民雄(37年没)の作品も収録されている。
現在文化庁は、著作権保護を作者の死後50年から70年に延長しようと、著作権法の見直しを進めている(2004年、映画は公開後50年から70年に改正された)。アメリカ政府が「年次改革要望書」で要望しているらしい。とすれば、日本政府は郵政民営化のようにこれに従うだろう。
もし延長されれば、新しく著作権切れになる作家が20年間現れない。青空文庫にはどう影響する?
たとえば、前述の徳島県出身の作家は、いずれも死後70年未満。保護期間が70年だと、2006年現在では著作権がまだ切れていないことになる。著作権法が過去にさかのぼって適用されるものに改正されれば、青空文庫からも消えることに。
将来何か新しい「本を読む手段」が登場したとき、電子データの価値は今よりももっと高まるだろうから、青空文庫の収録作品数は多いほうがいい。
延長反対!
2006年05月08日
●新しい職場は複雑系② 「カオス」
傘を持っていくべきか置いていくべきか、それが問題だ──。
実際、ニュートン力学を使いながらも、予知できないことが山ほどある。舞い落ちる木の葉一枚一枚がどこに落ちるか、いつどこで地震が発生するのか、分からない。
3つ以上の天体が互いに干渉しあう場合、あまりにも複雑な軌道を形成することを発見したフランスの数学者アンリ・ポアンカレが、最初にカオスに気づいた人物だそうだ。
未来がまったく予想不可能な振る舞いをするカオス。身近で典型的な例が天気予報だ。新鮮な短期はまあ別にして、長期予報はなかなか当たらない。なぜ当たらないのか。
空気の流れ、水の相転移、日照、海流、地形…非常に多くの複雑な要素の条件、それらが互いに及ぼしあう作用などを考慮しなければならないからだ。しかし、どれも力学法則に当てはまる自然現象であるから決定できるはずだ。だが、コンピュータの処理能力が上がった現代でも、冒頭の問題は頭を悩ます。
新しい職場も、まさにカオスだった。
年齢、序列、役職、経験、社歴、学歴、能力、性格、人脈、派閥…見えるもの見えないもの、変わるもの変わらないもの、様々な要素が社員それぞれに存在する。同じ言動でも、怒ったり怒らなかったり、自分の出した指示を勘違いしたり…困った上司はどの会社にもいるが、一人一人の属性を掴むのは難しくない。しかしそれらは、時と場所、その場に居合わせる人物によって、異なった姿を呈する。
たとえば2人の上司が180度違った指示を出す。どう対応すればよいのか。一筋縄ではいかないだろう。その2人についてだけ考えればよいわけではなく、影響を及ぼす要素は複数あり、複雑に交わっている。
天気予報同様、個々の振る舞いは予測できても、相互作用が複雑すぎるために、結果を予測できない。こういった系を「複雑系」という。
新しい職場は、禍のもとがどこに胚胎しているか予測不能である。
つづく。
2006年05月03日
●新しい職場は複雑系① 「決定論」
「決定論」か「非決定論」か、それが問題だ──。
世の中の、ありとあらゆることがあらかじめ決まっているという「決定論」。あなたがこのブログにアクセスすることも、夕食に何を食べるのかも、たった今頭に浮かんだ考えやイメージも、過去から一意に決まっていたのだ。
「そんなはずはない。自分は自らの意志で行動しているんだ」という反論を思いつくことさえも、すべて決定していて覆すことは不可能。そもそも自由意志など存在しない。自らオリジナルな選択をしたようであっても、決められていることを必然的に実行しただけにすぎない。確立など存在しない。これが決定論。
そうではなく、このブログにアクセスしない可能性もあったと考え、人生どうなるかわからない確立的なものだとする「非決定論」。
世界はどちらであるのか。議論に決着はつかないが、僕は前者だと思っている。初期条件──最初の位置と速度──によって、その後の運動が完全に決定できるニュートン力学。滑らかな床の上を転がした球が、どこで止まるか? 初期条件が分かれば、完全に予知できる。
ところが、決定論的な規則に従いながらも、極めて複雑で不規則、確率的な動きをするのが「カオス」だ。
──新しい会社。慣れない新入社員が「複雑系科学」とこじつける。
つづく>>②「カオス」
2006年03月12日
●人は変わる。確かなものなどない
平易な日々にいくらか倦み弛み、漫然と仕事をこなしていると思っていたが、いざ辞めるとなると実に感慨深いものだ──。
2月末付けで、2年間お世話になった職場を退職することになった(このエントリーは2月末に書きました)。そして3月から新しい仕事が始まる。俺は何かの区切りに到達すると、自然とその出発点に思いを馳せる。2年前を振り返ると、考え方などが随分変わったと思う。
わずか2年前に、絶対だと信じ、金も時間も情熱も、全てを注ぎ込んでいたことが、今は全く魅力を感じることがなく、どうでもいい。少し極端かもしれないが、そんな風に感じることがある。当時熱心であったほど、それは虚しい…。
と、これまでは時間を空費したり、$#!Tな女に振り回された過去の自分を幼稚に思い、失せてしまった情熱に虚無感を感じることがあったが、最近はその考え方を改めた。
人は変わるのだ。
人は変わるのが必定なのだから、過去の自分と比較して虚しいと感じることに意味はない。反省するのはいいが、過去の自分自身を卑しめるべきではない。そのときの自分も「本当の自分」に違いない。
2月26日。このブログを始めて1年がたった。過去ログを読むと、なぜこんなことを書いたのかと実に面映い。だが間違いなく俺が書いたのだ。催眠術にかかっていたわけではない。無論このエントリーも例外ではない。
もし「自分探しの旅」に出る人がいたらこう言いたい。そんなものは探さなくてもお前はお前だ。かっこ悪い自分も、誉れな自分も、「何がしたいかのか分からない、したいことが見つからない」自分も、今そこにいる「本当の自分」なのだ。
厳密に言えば、時々刻々と人は変わっている。明日起きれば、爪も髪の毛も少し伸びている。細胞は繰り返し生まれ変わっており(代謝)、昨日の自分と完全に一致することはない。人は変わっていくのが当然で、確かなものは何もない。唯一分かっていることは、いずれ死ぬということだけである。
2006年01月30日
●ライブドア事件に思う-ホリエモンとは何だったのか-
無料プロバイダ
初めてプロバイダと契約し、自宅のパソコンをインターネットに接続したのは六年前。その時使っていたのは、無料プロバイダの草分け、〝ライブドア〟だった。
当時のインターネット接続環境は、一般に回線速度56kbpsのダイヤルアップ接続、あるいは64kbpsのISDN回線で、プロバイダ利用料金とは別に、利用時間に応じて電話料金が請求されるという料金設定が主流だった(現在は定額制が主流)。
大学生だった俺は、パソコンショップなどで無料配布していたライブドアのCD-ROM(インターネット接続設定ソフト)を教室で偶然拾い、「無料プロバイダ」の文字に痛く感動した。この聞いたこともないライブドアなどという会社と迷うことなく契約した。
それからライブドアは、無料プロバイダ最大手として知名度をグングン上げていく。だがそれとは逆に、創業以来赤字が続くことになる。変化のスピードが恐ろしく速い業界。一年後、俺も大手のADSL回線に乗り換えた。
そして02年、ついにライブドアは倒産する。そのライブドアを1億2000万円から2億円の間と言われる価格で買い取ったのが、堀江貴文前社長率いるネットベンチャーのオン・ザ・エッヂだった。
(この辺りは以前にも書きました)
